老化に関わる遺伝子

老化の概要

肉体的な疲れやすさや肌のみずみずしさの消失、シワやシミが増えたり、白髪、骨量減少、内臓機能の低下、アルツハイマーに代表される認知記憶の低下など、人は年齢を重ねて老化していくことで様々な不具合や病気になりやすくなる動物です。そして老化は、細胞レベルでは、人間が細胞分裂を繰り返すことにより「テロメア」と呼ばれる染色体(DNAとタンパク質の集合体)の粒子の長さが短くなることで生じる現象で、その細胞分裂の回数が限界値に達したとき寿命を終えることになります。

 
そんな老化ですが、1990年代以降、老化に関わる原因として、テロメアの短さや酸化ストレスによる活性酸素の発生のほかに、細胞周期制御因子、ガン抑制遺伝子、Sir2遺伝子、解糖系代謝因子、リボソーム遺伝子、タンパク質合成関連遺伝子、DNA修復遺伝子、核タンパク遺伝子、炎症関連遺伝子などの遺伝子が関係していることが判明してきました。つまり、寿命や老化の速度は、両親から受け継いだ遺伝子によっても運命付けられると考えられてきたのです。

 

しかし、現在様々な研究によって、老化や健康が生まれ持った遺伝子よりも、育った環境や日々の食生活、心理的な状態など、これまで経験してきた生活習慣に影響されることが分かっており、この生活習慣が遺伝子の影響以上にテロメアの状態や短縮速度に関係すると考えられています。

 
また、ある遺伝子の研究で、長寿の人が多い沖縄県の100歳以上の人たちが共通して、免疫細胞の働きを強める長寿遺伝子「DR1」や心筋梗塞を防ぐ遺伝子「アポタンパク質E2」などを持っていることが分かりましたが、ほとんど多くの人間が実際に有効活用できていない長寿遺伝子を持っている中、彼らは長寿遺伝子を働かせるためのスイッチとなる生活習慣を持っていたのだそうです。

 
その生活習慣は、普段からストレスを感じすぎない生活を送ったり、食品添加物や農薬を極力避けることで、果物・生野菜を中心に新鮮な食材を食べて酵素の無駄使いを防ぐことがキーポイントになることが分かっており、生まれ持った長寿遺伝子がなくても後天的な生活習慣によって遺伝子を強化できることが分かってきています。
 
* 長寿遺伝子は、上記以外でも「サーツー遺伝子」など多くの種類があります。

 

(参考文献: 細胞から若返る! テロメア・エフェクト / Elizabeth Blackburn, Elissa Epel, 森内 薫, 2017)
(参考文献: テロメア 生命の回数券 / 自由国民社,2017)
(参考文献: 老化はなぜ進むのか BLUE BACKS / 近藤 祥司, 2009)
 

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