若返りにホルモン剤注射は有効か?

若返り

老化の原因として一般的に知られているものとして、動物性食品や食品添加物・農薬の過剰摂取、過度の喫煙・飲酒、継続的な精神的ストレス、スマートフォンなどによる電磁波の影響などが挙げられます。これらはいずれも、体内で多くの活性酸素(フリーラジカル)を発生させることにより体の中の酵素を極端に消耗してしまうために、老化促進に関連していると考えられています。

 
つまり、体内で活性酸素の発生量を抑えるためには、上記と逆のこと、いわゆる動物性食品や食品添加物・農薬の摂取をほどほどにする、なるべく禁煙と少量の飲酒にする、心理的ストレスを感じにくい環境で過ごすなどに生活習慣を切り替えれば良いことになります。しかし、なかなかこれまで慣れ親しんできた生活習慣を急に変えるというのは非常に難しいことで、なんとか切り替えることができたとしても、新しい習慣を継続することがさらに難しいのです。

 
そこで、もっと手っ取り早く、また生活習慣を変えることよりも若返り効果が高いと考えられている西洋的なアプローチ方法が考察され、それが人の老化や若返りに影響を与える「成長ホルモン」という物質を活用する方法です。

 

成長ホルモンは、骨や筋肉を作ったり、新陳代謝に関係する重要なホルモンのことで、10代で分泌量が増加し、成人後から徐々に減少、40代で約半分、80代で1/20にまで減るとされています。そして、成長ホルモンが減少することで身体に様々な老化現象が起こり、肌のハリがなくなってきたり、運動後の息切れ、白髪の増加などが生じやすくなります。

 
そのため、アンチエイジングを目的にヒト成長ホルモン製剤を投与する施術が注目されているわけですが、1つ懸念点として挙げられているのが、老化という自然の流れに反して成長期の頃と同じ環境を、人工的な遺伝子組み換え技術により作られたホルモン剤によって体内で作り出そうとしている点です。遺伝子レベルの観点でも、細胞分裂の限界回数を人工的に変えることができないのに、たとえ少々の若返りを手に入れたとしても寿命自体を延ばせるわけではないのです。

 
また、ヒト成長ホルモン製剤の安全性は動物実験でのみ確認されているだけで、一説には人に使用した場合の経年的な追跡調査はリアルタイムで行われている段階であるとも言われています。

 

このように考えると、成長ホルモンによる若返りを期待するよりも、むしろ各細胞の染色体末端にあるテロメアを伸ばして寿命を少しでも延ばそうとアプローチすることの方が、細胞分裂回数に影響を与えられない現代の遺伝子学においては、本来の老化を遅らせる方法として有効なのかもしれません。

 

(参考文献: 病気にならない生き方2 実践編 / サンマーク出版,2007)
 

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